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翔ぶが如く

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今年になって翔ぶが如くを読み始めて、昨日読み終わりました。この本は司馬遼太郎さんの著作で、日本で最後の内戦となった西南戦争について書かれた本です。この本は、1990年にNHKの大河ドラマになり、西郷さんを西田敏行、大久保利通を鹿賀丈史が演じました。この時は既に原作を読んでましたが、大河の方をあまり面白くなかったような気がしますね。

村田新八
僕にとってこの本はもう何回読んだかというくらいの愛読書なのですが、司馬さんのコラムを読むと、元々は村田新八という人を主人公にしたかったらしいのですが、あまりにも史料が残っていないため、明治元年から明治10年までの10年間という時代が、主人公になってしまったというところがあり、大河ドラマのように西郷さんや大久保利通が主人公ということではありません。
そもそも村田新八という人物はどういう人物かというと、結論から言うと西南戦争の西郷軍の大幹部として西郷隆盛に殉じる人物です。もう少し詳しく話をすると、幕末から西郷さんの活動を助け、共に島津久光によって遠島となり、維新後は外遊をして帰国すると、国内は征韓論で沸騰して、征韓論派である西郷さんが反征韓論派の大久保利通に負けて下野してしまっており、征韓論が非であるということがわかりながらも、情誼という点で西郷さんにつかざるを得ないという非常に厳しい立場に置かれた人物です。
同じ時代に生きた人たちの村田新八に対する評価はとても高くて、西郷軍の大幹部でありながらも大久保利通からも高く評価されていましたし、幕臣出身である勝海舟からも、一国の宰相として大久保の次は村田であると評価されてました。人物眼のある勝がいうことですから、そうだったんだなという思いです。
じゃあ、大河の翔ぶが如くでは村田新八を誰が演じていたかというと、益岡徹さん。村田に似ているといえば似てるという感じがするけど、Wikipediaで彼のことを調べてみたら、長州出身というところをみて、僕は思わず苦笑いをしてしまいました。
桐野利秋

ま、当時のキャスティングを見ていると、冒頭にも書きましたけど西郷さんと大久保さんが主人公になっているけど、実際にはこの戦争のきっかけになったのは、政府側の川路利良(日本の警察を創設した人物です)が西郷さんの暗殺を図ったということから端を発しているし、それに対応して事実上の西郷軍のトップになったのは、幕末時西郷さんの用心棒であった桐野利秋であり、この二人を大河ではクローズアップするべきだったと思うけど、川路利良を塩野谷正幸さん、桐野利秋を杉本哲太さんが演じてる。力不足だったと思う。大河のキャスティングはこちらから。

話は脱線するけど、桐野利秋という人は、榎木孝明によって「半次郎」というタイトルで映画化されてます。榎木孝明さんはもともと鹿児島出身の俳優さんです。結構期待してたんだけど、重要人物である薩摩軍側の永山弥一郎をEXILEのAKIRAが演ってるとことがわかって一気に見たくなくなりましたけどね(笑)予告編がありますので、紹介しておくね。

この西南戦争は当初薩摩軍が立ち上がれば、日本中の反政府系が立ち上がって新政府を打倒するだろうと言われているくらい西郷さんの声望が大きかったし、当時鎮台と言われた徴兵された農民や町人は、戦闘者として武士とは比べ物にならないくらい弱いとされていました。
薩摩軍のトップである桐野利秋も、西郷さんが立ち上がるだけで、日本中の反政府軍の人たちが立ち上がるだろうと思っていたし、それだけを戦略として挙兵をしました。対する政府軍は、兵力が弱いということで、様々な戦略を立てて兵力で負けているので、圧倒的な数の兵隊と優秀な武器で相手を凌駕しようとして、現実的にそれで対応しました。
川上操六

結局戦略のない薩摩軍は、熊本城攻撃に集中してしまい、その間政府軍は兵隊の数と優秀な武器の数で敵を凌駕させようとする目的が達成してしまい、また、熊本城には後の日本の軍隊を宝というべき、川上操六児玉源太郎奥保鞏などがいたということもあり、結局薩摩軍は惨敗、鹿児島県城山で自沈という結果になり、いくら兵隊が優秀でもトップが無能だとその組織はだめになるということを裏付ける結果となりました。

ちなみに川上操六という人は、後に日本の参謀総長になった人で、日清戦争を勝利に導いた人です。児玉源太郎は、日露戦争の満州軍の総参謀長で、日本陸軍をロシアに負けないようにした人物。個人的には近代日本で僕は一番偉い人だと思ってます。奥保鞏は、その日論戦争の第二軍の司令官になった人物。この人が凄いのは、出身が小倉藩で、この小倉藩は戊辰戦争時に幕府側であり、当時薩長閥が力を持っていた政府において、実力で日論戦争の司令官になったところです。当時奥保鞏はいくら藩閥から外れていても、外せないだろうというところがあったと言われてます。

僕は個人的には桐野利秋という人は大好きなんだけど、かつて長篠の戦いで織田徳川軍が常勝を誇った武田軍を圧倒したのは、兵力と言うよりも優秀な武器(当時は鉄砲でしたが)を運用した結果を知らなかったんでしょうね。
ただ、この結果重大なのは、薩摩軍が消滅するように負けたことで、武士の時代が終焉したということです。これはもともと(身分が低いという意味で)足軽出身だった山県有朋が、町民や百姓で構成された軍隊を率いて、武士でも最強と言われた薩摩軍を圧倒してしまい、兵隊は訓練すれば強くなるということを証明したし、その徴兵制を事実上作った山県有朋がこの後明治の異常な権力者として君臨するきっかけにもなりました。
この本は、明治の色々な人物が出てきて、飽きないです。特に「近代日本人の肖像」というサイトをみると、人物の妙録が書かれているので理解の一助になります。

【今日の記事で紹介したリンク先】
人物はすべてWikipediaのものです。

翔ぶが如くは全10巻と長編ですが、司馬さんの筆力もあり、実に読みやすいです。僕はもう何回も読んでるので、あっという間に読み終わりました。