2016/06/110 Shares

日本経済新聞 統治なき肥大化 小保方博士と理研の迷宮(下) という記事を整理しました

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今回の日本経済新聞の金田記者が書いた、理研のルポは理研の組織というものがどういう組織で、この組織がいかに世の中の常識から外れていると言うことがよくわかり、最近の新聞記事において類を見ないものだと思います。

Contents

社会性が欠如している理研

今回の「統治なき肥大化 小保方博士と理研の迷宮(下)」という記事が最終になりますが、まず、理研という組織が実に社会性のないものだということがよくわかります。今回でもそういうことがわかる取材が行われていました。奇異なのは、再三の取材依頼に対して全く応じないという態度です。

理研は特定国立研究開発法人に指定される予定だったが、その組織に指定されるメリットについての取材を申し入れると
「(新法人は)理研が自ら手を挙げてなるものではなく国から選ばれるものである」
という返答で取材を拒否してきたというのです。これは誰が聞いても建前であるということはということはわかりきっているにもかかわらず、こういう杓子定規のような返事をしてくる事自体、驚きです。というのは、この時期、STAP細胞問題で世の中が理研を注視しているにもかかわらず、第三者が見たら首を傾げるような対応をするというのは、組織自体が病んでいるとしか思えないのです。
そこで取材者が

質問のテーマを「独立行政法人としての10年の総括」に変え、理事長の野依良治に依頼した。だが、広報担当者はメールで、「スケジュールが詰まっている」として、野依のメッセージを添付してきた。
 「光栄です。またの機会によろしくおねがいします」
 STAP細胞論文を巡る騒動が続き、理研と小保方晴子側が何度となく会見を開く中、組織のトップが1カ月以上、その席に現れていない。

どこかの社会主義国家の対応と全く変わらず、日本国内にこういう組織があったのかと思うと驚愕する思いです。

過去の理研ー闇への道筋

金田記者はこういう組織の闇の部分は昔からだったと過去を振り返ることで、こういう対応は基本的には組織に根付いた伝統的なものであると言うことがわかり、理研に対する疑問が氷解しました。

組織にミッションを文書化する必要がないという理事長

過去の理研はどういう道のりを歩んだのかというと、
1993年に国内外の有識者を招いて運営と研究の評価を受ける「理研アドバイザリー・カウンシル」を設置し、それを説明するための組織のミッションや役員の責任がないということに気づき、文書を作ろうとすると、当時の理事長小田稔が

「文字として表現できないところに理研の良さがある」

と強く反対し、結局簡略された英語の文書のみを発表しただけだったとのことです。そもそも組織のあり方や役員の位置づけが明確になされていないということ自体が、世界的にも異質なものなのではないかと思うし、理事長の鶴の一声で重要な事がなくなってしまうというのが不思議なことです。しかも、それを日本語化しようとすると

組織や意思決定が複雑で、しかも具体的な表現にした瞬間に意見が対立したという。

というもので、難しい組織のです。

膨張を続ける研究センターとポスト争い

その後生命科学だけで6つの研究センター、昨年4月には

第3期中期計画が始まるタイミングで、研究センターを再編。その結果、埼玉県和光市の本所(本社)にある基幹研究所と横浜市にある植物科学研究センターの重複する研究室が統合され、「環境資源科学研究センター」になるなど、8の統合・再編が実施された。

この結果、理研内でポスト争いがおきて、

それでも、組織が一体として機能すればいいが、再編されたはずの研究室が、そのまま各地に分かれて残ってしまっている。「テレビ会議が多くなった。でも、近くにいるわけではないから、研究上の連携はとりにくい」

組織自体が機能していないということがよくわかります。しかも研究者やプロジェクトが任期制ということもあり、結局期限に追われると言うことが、理研において研究以上に最優先されているというものです。

小保方さんに関して言うと、当初は若山照彦研究所に所属してそこでSTAP細胞の論文を2年かけてまとめる予定だったが、若山氏が急遽山梨大学に転出してしまい、その公認として笹井芳樹が指名される。しかし、その笹井もネイチャーに却下された論文も読まず、実験データーもほとんど確認することもなく、共同執筆者として名を連ねることになるというもので、これも普通の引き継ぎではあり得ないことです。

朝永振一郎の警鐘

 

この無駄に優遇される科学と組織について、朝永振一郎がノーベル賞を受賞した時の講演で警鐘を鳴らしています。

研究をして新しい技術が出てくると、非常にお金がもうかる、だから大いに科学を奨励しなくちゃいけない、そういう見方が出てきたわけです。ほんとうに科学の価値のおきどころを理解しての上の優遇でありませんと、科学自体、歪んだ形になってしまう。その優遇にむくいる科学者の行動もまた正しくない方向に向っていくおそれがあるのです

科学の振興は、拝金主義ではいけないというもので、価値の基準はなにかということを考えた上で優遇をしなければ、間違いがおきますよということです。ところが、理研には10兆円を越える予算が回されている事実は、その事自体がすでにゆがんでいると言われても仕方がない。

さらには、科学者に対しても苦言を呈しています。

科学者というのは何を考えているのかさっぱりわからないというふうにおっしゃるのも、無理ないことだと思うのです。少なくとも専門以外の人と話をする能力、そういうものをもたなくてはならない

つまり、社会性をもった社会人たれということで、専門バカじゃダメですよということです。これは科学者だけでなくて、どの世界でも当てはまることです。この苦言は、「科学者の自由な楽園」という本に書かれています。

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大河内正敏が理研で成功した理由

戦前理研を成功に導いたのが、大河内正敏で、彼が理事長に就任すると、

物理部と化学部を解体して、主任研究員制度を導入。14の主任研究員が研究室を持ち、所長の直下に同列に並べられた。敵対していた両部の部長も、一主任研究員となった。

休日に研究者が集まって研究の状況や成果を、大河内も交えて話し合う。他の専門家や社会との接点を増やしていくことで、新しいヒントが生まれ、自然と組織全体の進むべき方向性が見えてくる。

 

彼によって、研究成果を事業化し、ここから発生した企業で有名なのはリコーです。また、彼のもとで田中角栄が勉強して、知見を深めたというのは早坂さんの著書にも書かれています。

また、この記事では大河内正敏の研究者である『大河内正敏──科学・技術に生涯をかけた男』の著者、専修大学教授の斎藤憲は

「組織で研究をすることの意味を熟知していた」

と語っており、結局この組織には大河内正敏のような「経営者」がおらず、膿が出てきているという印象が強いです。

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しかも、理研の小保方さんの論文の調査委員会の3人の切り貼りは問題がなくて、小保方さんはダメだという、だれでもがわかるように説明する人が誰もいないというのはどういうことなのかと僕は思うわけです。これができない以上は、この組織は崩壊するのではないかという気がしますね。何故ならば、子どもばっかりで大人が誰一人いない。それは、科学者としてすごくても、マネージャーとして優秀な人が誰もいないし、いたとしても潰されるような組織で、かつ、お金だけはあるというのであれば、寄ってくるのは欲の皮だけが突っ張った族議員だけで、第三者の僕が見ても気持ち悪いです。

小保方さんのコピペがダメだけど、調査委員会の3人はOKの記事と世間の反応

 

  1. STAP元調査委3人の過去論文「不正なし」 理研発表

    asahi.com9 時間前
    理化学研究所は13日、STAP細胞論文の調査委員会の委員だった3人が関わった過去の論文に疑義の指摘があったことを … 理研によると、指摘があったのは、石井氏と真貝氏らが2005年に科学誌に発表した論文1本と、古関氏が関わっ …

ちなみにトップの朝日新聞の記事に対するツィートをご紹介すると、

STAP元調査委3人の過去論文「不正なし」 理研発表 – 朝日新聞デジタル http://t.co/PTrQY91psa まさに、りけんの終焉だ。 そんな発表は、だれも信用せんな。
— miyabi_net (@miyabi_net) 2014, 5月 13

全くその通りだと思いますね。

どういう基準で千引をしたのか…気になる。結果は薄々感づいていたけど。 “@asahi: STAP元調査委3人の過去論文「不正なし」 理研発表 http://t.co/7Cpg3DS0Rf
— 「堕落」の極 サトシ (@satosi_1111) 2014, 5月 13

自分勝手な基準という感じがする。

STAP元調査委3人の過去論文「不正なし」 理研発表 – 朝日新聞デジタル http://t.co/n980dohOrK 良い切り貼りと悪い切り貼りの違いとは
— たっくん(こんにちは赤ちゃん) (@Ttakkuunn) 2014, 5月 13

理研の結論の出し方は、すごく暴力的で、北朝鮮が張成沢を処刑した時の理由と変わらない感じがするけど、一般的には誰もこのコピペの違いが分かっていない。理研はまずこういうところから世間に歩み寄るべきだと強く思いました。

また、この日経の記事対するツィートのご紹介もしておきます。

日経【小保方博士と理研の迷宮(編集委員金田信一郎)http://t.co/J6JetTS3B3】 ⇒上中下3編に亘る力作。古く巨大な組織の内向きな構えの醜さを抉っている。優れた才能が潰され成果が挙がらないのも当然だと云う物語。嘗ての道路公団歴代総裁の他人事のような述懐に似る。
— 小倉摯門 (@simogura) 2014, 5月 14

 

ライフサイエンス系の研究所は2000年頃設立されたのが多いのか。言われてみればみんな最新鋭の設備が揃った新しい建物だったな。研究室の設備は億単位だったと思う→統治なき肥大化 小保方博士と理研の迷宮(下)  :日本経済新聞 http://t.co/Lic5Qd0dZH
— peko (@peko409) 2014, 5月 13

トップには企業家を据えないと理研はだめだと思います。政治家や経営者の意見も聞きたいところです。