2016/06/110 Shares

蓮子様の風雪の前半生

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花子とアンでは、仲間由紀恵が演じる蓮子様が圧倒的な存在感をだしていて、さすが仲間由紀恵という感じがします。特にこの人の凄いところは、自分の感情を出したいんだけれども、敢えてそれをださないという、実に心の動きをうまく演技をしていますが、まだまだつらい時間を彼女は過ごさないといけない。

Contents

自分に無理解な夫伝助

 

「お金お金……貴方はいつもそうです!私は芸者ではありません!!!」 「( =①ω①=)フフフ なんを言いよるとか!こげな 高い芸者がおるか!!!」 ハハハハ…………… 嘉納ちゃん懐が広いのか………うーん(–;) #花子とアン pic.twitter.com/gQGoOIeW3b
— ジークイオン (@710Sakurai) 2014, 5月 28

今日もバカ兄貴が蓮子様の旦那の嘉納伝助にお金を無心に来て、それをバカ兄貴にお金を渡す伝助。しかも伝助は「お前のために払う金と思えば惜しくない」と言い放ち、蓮子様としては、自分の運命に対して泣き笑うしかないという、実にすごい演技を仲間由紀恵はしてます。この人も一皮むけた感じがしますね。

白蓮を理解した宮崎龍介

それにしてもこの蓮子様のモデルとなった柳原燁子の前半生は、自分の環境に振り回される人生で、後に夫となる宮崎龍介がいみじくも白蓮の死後文藝春秋に寄稿した文章において、

「私のところへ来てどれだけ私が幸福にしてやれたか、それほど自信があるわけではありませんが、少なくとも私は、伊藤や柳原の人人よりは燁子の個性を理解し、援助してやることが出来たと思っています。波瀾にとんだ風雪の前半生をくぐり抜けて、最後は私のところに心安らかな場所を見つけたのだ、と思っています。」

とありますが、白蓮は後半生において龍介と出遭ったことがどれだけ彼女にとって救いであったかということはよくわかるし、後に白蓮事件をおこして愛に生きる女のようなことを言われていますが、僕は違うと思うのです。

風雪の前半生

それこそ、彼女の前半性を見ることで、いかに周囲に自分が理解されずに、あるいは周囲が理解をしようとさえしなかったことが、結局白蓮を追い込んでいったと思うわけです。

実際に彼女が龍介と出会うまでの人生を振り返ってみると、

  • 柳原前光の妾の子として生まれる
  • 14歳で同じ公家の北小路家に嫁ぐも、相手が知的障害者であったということ
  • 20歳で離婚をして、実家に戻り、東洋英和に入学
  • 25歳で伊藤伝右衛門と結婚、しかし伊藤は白蓮を理解をしようとさえせず、しかも家族構成が複雑で、無用な摩擦が生まれ、結局伊藤との結婚生活では、白蓮は孤独と懊悩を深め、その思いをひたすら歌にたくせざるを得ないほど追い込まれた。

というもので、本当に気の毒で、よく自殺をしなかったほどだと思うのです。

白蓮の伊藤伝右衛門への絶縁状

そこで、宮崎と出会い、白蓮事件をおこし、伊藤に対して新聞の紙面で公開した文章の全文において

 私は今あなたの妻として最後の手紙を差しあげます。今私がこの手紙を差しあげるということはあなたにとって突然であるかもしれませんが、私としては当然の結果に外ならないのでございます。あなたと私との結婚当初から今日までを回顧して、私は今最善の理性と勇気との命ずるところに従ってこの道を執るに至ったのでございます。
ご承知のとおり結婚当初からあなたと私との間には全く愛と理解とを欠いていました。この因習的な結婚に私が屈従したのは私の周囲の結婚に対する無理解と、そして私の弱小の結果でございました。しかし私は愚かにもこの結婚を有意義ならしめ、でき得る限り愛と力とをこの内に見出していきたいと期待し、かつ、努力しようと決心しました。

結局伊藤の白蓮への無理解が結局こういう事件を引き起こしたと言われても、しかたがないような気がしますね。

そもそも柳原前光と言っても、あまりにも出来の悪い公家の中では目端が利く程度で、実際に司馬遼太郎さんの翔ぶが如くで登場しますが、清との交渉で李鴻章にけんもほろろの対応をされて、全く子どもの使いのようであったりしていて、たまたま岩倉具視に目をかけられたことで、栄達をした人物ですし、その息子、義光は貴族議員として一悶着をおこしたり、男色事件をおこしてみたり、その娘も不良華族事件をおこしたりと、はっきり言ってダメな人たちだったようです。

幸福な後半生

 

そして、白蓮は宮崎龍介と出会い、その後幸せな家庭を築いていくというのは、前半生を宮崎がいうように風雪の前半生だったと思いますが、後半生は息子が戦死をしたものの、幸福な人生だったように僕は思うのです。

今の花子とアンは、まさに風雪の前半生のまっただ中に蓮子様がいて、見てるこっちも息苦しくなる感じです。早く龍介に出会えるといいと思うのです。

林 真理子 集英社 2005-09-16