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広告とソーシャルメディア

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営業をしていると、一番成約率がいいのは、知り合いに紹介してもらうことです。商談の時も、お互いに共通の知人がいるから、商売以外の話も弾みやすいので、お互いに話があって、仕事が前に進むことが多い。一方で大変なのは、問い合わせをしてくれた時のお客さんを成約に持っていくのは、これは難しい。それはそのお客さん自体が同業者に声を掛けているわけですから、それは当然だと思うし、そこをなんとか契約にもっていくのが、営業の醍醐味でもあるわけです。

僕はここ数年Googleのadwordsの管理を随分やってきているんだけれども、はっきり言うとこのキーワードの分析って結構面倒なんですよね。adwordsの管理画面はものすごく良く出来ていて、どういうキーワードが成約率が高いとか、或いは、このwebサイトでは、こういうキーワードも有効かもしれないというところを提案してくれているんだけれども、ここ1年ちょっとは不景気ということもあって、クリック率も成約率も落ち込む傾向にあります。

そこをまたキーワードマーケティングとかしていると、結構手間がかかったりして、僕らのようなネットマーケティングをやっているような会社は、広告の実費に対してはだいたい20%を管理費として、出稿しているキーワードの状況とか、今後こう言うやり方がいいのではないかというような提案をしています。そうすると、20%を貰っていても、その金額のグロスによっては、正直に言うと、赤字になります。というのは、仮に広告の出稿を50万円としたときに、それに対してフィーは10万円もらえることになりますが、広告の出稿費が1万円だった場合は2万円ですよね。この場合、10万円の仕事と2万円の仕事で、質量ともに同じ作業をしないといけない訳で、その辺りが大変難しい。

そもそも成約率が下がっていると言うのは、広告の効果が下がってきていると言うことでして、もっと具体的に言うと、検索結果にはGoogleにしても、Yahooにしても広告が表示されて、その後に自然検索されたウェブサイトのリストが表示されますが、クリック率から見ると、広告に表示されているものよりも、自然検索で上位に表示されている方がクリック率が圧倒的に高い。もっと具体的に言うと、検索結果で表示される広告のクリック率と、自然検索でリストアップされる場合のクリック率だと、自然検索の方が圧倒的に高いのです。最低でも3倍は違います。

もっとも、この検索連動型の広告というのは、凄く頭のいいやり方ではあるとおもうんですよね。これはどういう図式になるのかと言うと、

ユーザーが何か問題を抱えている
その問題をクリアするために検索エンジンで検索する
そこで自分の関心に合致するサイトを見つける

これが、通常ユーザーの流れなんだけれども、検索連動型広告というのは、ユーザーがあるキーワードを入力したら、広告が表示するシステムで、この広告はオークション形式なので予算が高ければ高いほど上位に表示されます。ですから、上位に表示されれば、目に止まることも多くなるということで、しかもクリックされなければ、課金はされないので、大変平等な広告のシステムでもあります。

ところが、先程書いたように、広告のクリック率は低下しています。

それはひとつは不景気ということもあり、ユーザーの消費意欲が落ちているということが一番大きい原因だと思うし、正直言って広告はうざったいのです。そうなると困るのは、GoogleやYahooといった広告を提供している会社です。さすがにGoogleは、Google For Advertizerという広告主向けのページを立ち上げて、どういうやり方をすれば効率の高い広告活動を展開出来るのかというページを立ち上げました。これは、広告を出す方にとっては大変良心的なコンテンツで、僕は大変すばらしいと思うのです。

Googleにとっても必死だと思いますよ。だって、売上の殆どが広告の売上に依存しているわけだし、その収入が減るというのはなんといっても死活問題だし、そもそも広告の契約率が落ちるということは、Google自体が広告媒体のブランドが低下するということもあって、それは必死に利用してもらうようにサービスのレベルを上げて良く努力をしないといけません。

一方で、先日僕の友人が温泉に行くというので、旅行サイトから申し込んだのですが、そのサイトに書かれているクチコミをみて申し込みをキャンセルして、もう一度そのクチコミのいい旅館を選んで、少し高かったけれども、別の旅館に申し込みをしたという話を聞きました。

冒頭にも書いたけれども、生の声ってすごく大事で、その生の声、例えば何かを紹介する場合には、基本的に悪意というものはあまり含まれていない事が多いと思います。だから、クチコミを信頼して僕の友人は旅館を決めたんだと思うのです。これに対してその情報を掲載しているサイトから何かお礼はあったわけじゃないですし、もちろん、その旅館から何かをもらったわけじゃなくて、自発的にクチコミを読み、そして旅館を決めたということです。

先日ビジネスビジネスツイッターの書評を書きましたが、この本は全く無名の人がツイッターを使って、ビジネス的に成功した、或いは、新しいムーブメントを作ったことを実例をあげて書いてあり、大変面白い本なのですが、この本に書いてあることは、担当者の善意と親切心が結局多くの人に支持されるというもので、そこには露骨な商売気というものはなく、自社のサービスや製品を理解してもらうためにツイッターを活用してユーザーに伝えているというものです。ツイッターノミクスでも大声を上げる時代じゃないということが書いてあり、これは広告の時代は終わりつつあるよということで僕はそれに大いに同意するものです。

このツイッターと言うものは、僕もだんだんわかってきたのですが、前にも書いたように「草の根」から発生する、人々の声が時系列に流れるものです。ですから、興味のあることについて延々とTweetしあうこともよくあります。そこにはクチコミの宝庫でもあり、コミュニケーションの手段でもあって、このビジネスツイッターの著者は、ユーザーが自分の意見を取り上げられることに喜びを感じると書いてあります。つまり、ソーシャルメディアにはコミュニケーションが成立をしていて、広告は別物であるにしても、一方的なメディアであり、ここまで情報が溢れていると、決め手は善意の人の意見が、広告を優先するのではないかと最近思うようになりました。

確かに僕は本を買うにしても、アマゾンの書評やブログを読んでみるし、Googleブログ検索では他の人は同じ問題に対してどういう意見を持っているんだろうと思うときに、活用して、まず検索連動型広告をクリックすることはありません。もちろん、広告という媒体はまだまだ有効だとは思いますが、Youtubeの動画までに広告があると結構ウザくって、それは僕だけの感想じゃないような気もします。ただ言えていることは、他の人がどう思っているのかということは、何かを決めるときに大きな分岐点になると僕は思うのです。そうすると、今度は広告自体の存在意義というものが問われます。

お金を払い、様々な分析をして仮説を立て、そして広告に出稿するというのは、コスト的にも時間的にも大変です。ところが、ソーシャルメディアで登場する名もなき人の声というものは、探し当てるまでは大変ですが、実質的なお金がでるということはありません。

そういう状況になりつつあるマーケティングの世界でGoogleはこれからどういう道を探していくのか、これもみものです。

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林信行(解説)

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