昨日の坂の上の雲ー敵艦見ゆ
昨日の坂の上の雲は旅順攻略が進み、奉天会戦を終え、そして連合艦隊がバルチック艦隊を迎え撃つというところで、来週ということになりましたが、やはり原作が名作ということもあり、実に緊張感のあり、江~姫たちの戦国~と比べて随分違うものだと思わず見入ってしまいました。
この坂の上の雲という長い物語は、正岡子規が死ぬまでがひとつの大区切り、そのあとは日露戦争への道ということになり、その日露戦争の先頭の部分については、旅順要塞の攻防と日本海海戦が僕はクライマックスで、昨日の敵艦見ゆの部分は実は本編でも中だるみの部分でもありました。
ただ、昨日見るかぎりでは、端折った部分もなきにしもあらずでしたが、さすがに製作者と役者の緊張感があり、僕も食い入るように観ました。
今回の敵艦見ゆのハイライトは、秋山真之がバルチック艦隊はどういうルートでウラジオストクに行こうとするのかということで苦悩するシーンです。つまり、バルチック艦隊が日本海を通るのか、太平洋を通って行くのかで艦隊をどう動かすのかという作戦が変わってきてしまうために、ワンセットしかない連合艦隊をどう運用すればいいのかというのが、作戦家としての苦悩でした。
結局この件については、東郷平八郎がバルチック艦隊は日本海を通るという見通しだしたために、真之はやや苦悩から解放されますが、それでもその見通しが間違った場合に作戦の再構築は不可能で、しかし、不可能になってしまうと日本が滅亡するので、そのプレッシャーに真之は押しつぶされそうになります。
どうして真之はそういう状況になってしまったのかというと、連合艦隊に与えられた使命は、バルチック艦隊を全滅させないといけないわけで、そのためには従来の艦隊同士で叩き合うという戦い方ではなく、作戦通りに艦隊を運用しないと敵艦を全滅させることが出来ず、そのためにはバルチック艦隊が一定のルートを通るという想定がないと作戦が立てられないため、真之は苦悩します。
そういう真之ですから、巡洋艦信濃からバルチック艦隊が日本海を通るという電報が入ったことを真之が聞き、こりゃこりゃと小躍りするシーンがありますが、これは想定通りという安心感だけではなくて、これにより日本を勝利に持っていけるという確信があったからなんだと思います。
このどのルートからバルチック艦隊が来るのかということは真之を考えるだけ考えさせて、司馬遼太郎さんの表現では脳漿を絞るだけ絞って最後は手をあわせて、なんとか日本海を通ってくださいというような神頼みをせざるを得ないほど、追い込まれたわけで、大変だったなと思います。
ちなみに日露戦争が終わってこの戦争によって早世したのが児玉源太郎で、気が狂ったのは秋山真之だと言われたそうです。児玉は陸戦の作戦、真之は海戦の作戦を担当したわけですが、児玉の場合は心労が枯れを蝕み、真之の場合は日頃心霊を信じる人物となり、日露戦を境に人物が変わってしまったそうです。それは坂の上の雲にも書いてあります。
ドラマ的言うと、最初渡哲也さんが東郷平八郎を演じるのは年取り過ぎじゃないの?と思いましたが、さすがに大俳優だけあって存在感があり、いい味を出してました。特にバルチック艦隊が8000mの地点にいるときに、艦隊を急旋回を支持するために右手を上げるシーンがあるのですが、実にかっこいいものでした。
来週は、日本海海戦ですね。これはここでは書きませんが、疲弊した今の日本人の心をすっきりさせてくれると思うのです。それだ歴史的な快挙を成し遂げるのですが、これらが結局仇となって結果的には大日本帝國が滅亡する原因となるのかと思うと、つらいところがあります。
ちなみに少しうんちくを書きますと、連合艦隊の参謀長が島村速雄から加藤友三郎に変わっていますけど、この交代劇は本編ではいいシーンになっています。ドラマでは削られてますけどね。で、島村速雄という人は、元帥になりますし、加藤にいたっては総理大臣になります。ただ、ドラマのキャスティングだと島村は舘ひろし、加藤は草刈正雄と中年超イケメンを採用してますが、現実はこうじゃないということを写真でお知らせしておきます笑
島村速雄
加藤友三郎