0 Shares

最近の奇縁まんだら

瀬戸内寂聴さんも、ずいぶん体調が復活されたんですかね。先週と先々週は岡田嘉子について書いてあった。この岡田嘉子という人に対しては、瀬戸内さんにとっては悪い印象しかないようで、2週目にはかなり感情を押さえずに文章をかいているので、びっくりした。つまり、岡田嘉子からうけた屈辱を書いてる。

そもそも、この岡田嘉子なる女性は、誰か。瀬戸内さんの文章に詳しいので、引用します。

(岡田嘉子は)スキャンダル女優としても有名だった。「椿姫」の映画を撮影中、相手役の竹内良一と映画をほうり出し駆落してた。
映画に入る前の新劇女優時代から、派手な男関係で知られていた。
新聞では、杉本と嘉子は前年の十二月二七日、上野駅から北海道に渡り、樺太へ入り、一月三日、地吹雪の中、手に手をとって国境を駆け抜け、ソ連領へ越境してしまったという。
それから連日、新聞はこの事件の報道で持ちきりだった。杉本良吉は共産主義者の演出家で、嘉子の舞台を演出して、たちまち熱烈な恋におちたという。嘉子は駆落した竹内良一と結婚していたが、夫婦の仲はすでに冷えきっており、杉本にも同志愛に結ばれた病気の妻がいた。
昭和十二年(一九三七年)に日中戦争が開戦し、世の中は軍国主義に塗りつぶされていた。プロレタリア運動に関った杉本は執行猶予中で、前途は暗かった。杉本は生きのびる方法としてソ連亡命を決行する気になり、嘉子は杉本に同行した。
ところがソ連側はスパイの疑いを着せ、ソ連に入って三日後には二人は引き離され、二度と逢うことはなかった。
杉本は獄中で病死したとされていたが、本当は越境した翌年スパイとして銃殺されていた。
嘉子は一人生き残り、戦後はモスクワで暮していた。

と、まあ実に数奇な人生をおくられている。画像検索をしたら、たしかに現代風というか、今でも通用する感じがする女優さんっていうか、すごく魅力的な人です。結局極寒のソ連に亡命するも、男はソ連のスパイとみなされて銃殺されてしまうという、悲哀を味わう。

そして岡田嘉子が70歳の時に、瀬戸内さんはインタビューをする機会があったけれども、岡田の対応は瀬戸内さんにとって屈辱のような扱いだったらしい。どうしてそうなっちゃったのかは、何も書いてないので、わからないのですが、その部分も引用するね。すっごい怒ってんだよね。

別れる時、つけまつ毛の濃い大きな目で私を上から見下し、
「書きたいんでしょ? 話してあげてもいいわよ」
と言い、鼻先で冷笑した。私は屈辱に震えながら、
「はい、ありがとうございます。御縁があれば」
と答えたが、書くものか! と内心叫んでいた。
その後、名古屋の劇場で私の小説が芝居になった時、廊下でばったり岡田嘉子に出逢った。向うから寄ってきて、
「御盛大ね近頃」
とからかうようにいい、つと身を近づけて、
「もう、何を書いてもいいわよ」
と言った。私は黙って頭を下げながら、書いてやるものかと、心のなかで思っていた。

という感じで、瀬戸内さん、凄く怒ってるんですよね。ま、怒りというエネルギーがあるということは、まだまだお元気ということで、僕はひとまず安心した。ただ、たしかにこの岡田嘉子最悪です。感じ悪い。

ちなみにこの事に関しては、音楽評論家の渋谷陽一さんがご自身のブログで面白い見方をされているので、それも引用します。あ、ロッキング・オンの社長でもあります。

渋谷陽一の社長はつらいよー瀬戸内寂聴、連載快調

特に先週、今週と2回書かれた岡田嘉子は筆が冴え渡っている。
この連載は瀬戸内寂聴が交流のあった文化人や芸能人の人物評である。その愛情を持ちながらもどこか意地悪な切り口はいつも面白い。
そして筆が一番冴えるのが、人物評を通して自分を語る時。今回も岡田嘉子と自分を対比させる中で、岡田嘉子も自分も見事に対象化してみせている。

瀬戸内さんは、あまり悪口をいうひとじゃないんだけど、いじわるな切り口って全く気がつかなかったし、人の批評を通して自分を語る時っていうのも、全く気がつかないもののみかただった。さすが渋谷陽一。

で、今日の奇縁まんだらは、僕の神様である司馬遼太郎さん。

この横尾画伯のイラストはちょっと人相がよくないですなあ。

で、読んでると、司馬さんのほうが瀬戸内さんよりもひとつ年下なんですね。司馬さんとの思い出については、瀬戸内さんが出家したときには、司馬さんが京都のお寺の事情を知っているから、なにか困ったことがあったら、何でも行ってくれと言ってもらったそうだ。それと、くも膜下出血で倒れたときにも連絡があり、京都の千花で心づくしと言えるおもてなしを受けて、感涙したというエピソードを披露している。

僕はもちろん司馬さんにはあったこともないのですが、これはわかる気がする。色々と歴史を研究していると、心づくしのような対応は歴史上の人物には見受けられるし、特に豊臣秀吉なんかはそういう事に対しては気を使うタイプだったから、彼の小説を書いたことのある司馬さんが、人付き合いの上で茶の精神を発揮した対応が出来ないわけないのです。

先週は、岡田さんへの激しい怒りで、僕はある意味心配してたんだけど、今週は心優しい司馬さんへの感謝の念が書かれていて、司馬さんファンでもある僕のほうが、涙がこぼれそうになってしまった。

ちなみにこの奇縁まんだらは既に3冊発刊されてます。瀬戸内さんの文章と横尾画伯のイラストが素晴らしい。

【追記】

iPadのビューンで週刊朝日を見てたら、瀬戸内さんのインタビューが掲載されていて、インタビューアは林真理子氏。読んでると岡田さんとのやりとりがあった。本人が語ってるので、載せます。

瀬戸内さんが言うには、逃げた二人のうちひとりは銃撃されて、自分だけ助かってるっと。じゃ、戦後お前はソ連で何をしてたのか、それを行ってくれって言うのが、瀬戸内さんの気持ちで、インタビューを受けている岡田さんは、

誰がお前に話すかと言う感情なんでしょうね。瀬戸内さんは瀬戸内さんですべてを調べつくしている私に対していけしゃあしゃあと嘘をつきまくるというのは、どういうことと!みたいな感じになって、ま、お互いに気に入らないという感じなんでしょうね。それはしょうがない。でも、本人による舞台裏が書かれてあって、大変面白く読ませていただきました。

編集後期で林さんが、瀬戸内さんの話が面白かったっていうけど、それはそうでしょうね。これだけいろんなコトを経験していたら、それは自分の話をするだけで面白いはずですよ。僕も一度このおばあちゃんと話がしたいなあ。

奇縁まんだら 終り
奇縁まんだら 終り

posted with amazlet at 14.02.03
瀬戸内 寂聴
日本経済新聞出版社
売り上げランキング: 316,140

この記事が気に入ったら
いいね!しよう